クラウド移行する4つのメリットとは|移行手順4ステップまで解説

「クラウド移行って聞いたことあるけれどよく理解していない…」
「クラウドに移行の具体的なメリットってなんだろう…」
「クラウド移行って具体的にどうやって進めるの?」
サーバーの運用をインターネット経由で利用できるサービスへ移し換える「クラウド移行」。
移行時の導入コストが安く、事業規模の変更に柔軟な対応ができる点が特徴です。
導入に成功すれば多くのメリットを得られる反面、正しいステップを踏んで移行しなければ、逆に混乱やトラブルを引き起こしかねません。
そこで本記事では、以下の情報をまとめました。
- クラウド移行とは何か
- クラウド・オンプレミスとは何か
- クラウドに移行するメリット・デメリット
- クラウド移行の流れ
本記事を読み進めれば、移行後に想定されるデメリットはもちろん、課題の洗い出しや計画立案の重要性が理解できます。
社内で「スムーズにクラウド移行ができた」となるために、ぜひ最後まで読んでクラウド移行に関する情報をアップデートしてください。
クラウド移行とは?
クラウド移行とは、サーバーシステムやデジタルデータを自社で管理している場所から、クラウド環境へ移し換えるプロセスを指します。
オンプレミス(自社運用システム)をクラウドサービスへ変更する際に使われることばです。
- PC内に保存していたデータをクラウドストレージへ移行
- 取引先とのミーティングをWeb会議に変更
- FAXなどの共有方法を廃止し、Webメーラーやビジネスチャットを導入
近年では多くのクラウドサービスが提供されており、業務やデータのクラウド移行は非常にしやすい状況になっています。
(1)クラウドとは?インターネット経由で使うサービス
クラウドとは、専門業者が提供するクラウドサービスをインターネット経由で利用するシステム形態です。
サーバーやシステム構築などは、サービスを提供するベンダーによって用意されたものを使用します。
クラウドが広まる以前まではハードウェアを購入する、またはソフトやアプリケーションをパソコンにインストールして使用する方法が一般的でした。
クラウド登場後はインターネット上でデータの共有やサービスの利用ができるようになり、多くの企業が利用するようになっています。
令和3年に総務省が行った「企業におけるクラウドサービスの利用動向」の調査によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%でした。前年が64.7%だったため、前年と比べて4.0%も上昇しています。
クラウドサービスの利用状況
出典:総務省 「通信利用動向調査」
本格的に広まったのは、2006年に当時のGoogle CEOであるエリック・シュミット氏が言及したことがきっかけです。
それ以降、さまざまな企業がクラウドサービスの提供を開始し、企業のDX化には欠かせない技術となっています。
身近な例でいうと、以下の3つがイメージしやすいはずです。
- ビジネスチャット(Slack、Chatwork、Microsoft Teams など)
- Web会議(Zoom、Skype、Google Meet など)
- クラウドストレージサービス(Google Drive、Dropbox など)
上記の3つは、社内サーバーで保管していたデータをクラウド上に管理を移行する典型的な例です。
インターネット経由で使えるサービスのため、テレワークや在宅勤務を推進する有効な手段といえるでしょう。
(2)オンプレミスとは?自社で運用されるシステム
オンプレミスとは、ハードウェアを用いた専用サーバーやインターネット回線を自社で所有し運用するシステムを指します。
企業がクラウド移行を検討する際に、対照的な考え方として出てくる用語です。システムをすべて自社で設計・構築するため、既存のシステムとも連携しやすく、優れたカスタマイズ性を有しています。
さらに、自社の水準に合わせたセキュリティを設定することができ、個人情報など機密性の高い情報を扱う場合に適している形式です。
柔軟性には乏しい点もありますが、自社で運用するシステムならではの強みも兼ね備えたシステムといえるでしょう。
(3)クラウドとオンプレミスの違い
クラウドとオンプレミスの違いを図で解説します。
近年、オンプレミスの管理方法からクラウドサービスへ移行する企業は多いです。
しかしながら、クラウドとオンプレミスにはそれぞれ長所と短所があり、どちらが適しているかは企業によって異なります。
そこで本記事では、クラウドへ移行するメリットとデメリットを詳しく解説しますので、自社に向いているかどうかの判断に役立ててみてください。
クラウドに移行する4つのメリット
クラウドに移行する、具体的なメリットをご紹介します。
代表的なものは、次の4つです。
- 導入コストを抑えられる
- 規模の拡張や縮小に対応しやすい
- トラブルに自社で対応する必要がない
- 老朽化の心配がない
それぞれの理由も解説します。
(1)導入コストを抑えられる
クラウドへ移行すると、システムの導入コストを抑えられるメリットがあります。
オンプレミスの場合、機材の購入費用やシステム構築・保守管理など、多くの初期費用が必要です。
- サーバー本体価格:10~100万円
- 周辺機器:20~30万円
- OS・ソフトウェア:10~30万円
- ネットワーク設定:10~20万円
一方クラウドサービスは、利用料を支払うだけで利用を開始できます。初期費用も不要なケースが多いです。
通常では莫大なコストがかかる分野であるため、導入コストを抑えられる点は大きなメリットでしょう。
(2)規模の拡張や縮小に対応しやすい
クラウドサービスであれば、事業規模の変更にも柔軟に対応できます。
事業を拡張したい場合は、クリックするだけで契約するアカウント数や容量を増やし、上昇したデータ使用量分を支払います。
事業を縮小したい場合も同様に、クリックなどの簡単な操作で契約内容を操作できます。
対してオンプレミスでは、サーバーを拡張するために機器を購入するのはもちろん、サーバーを置くための物理的なスペースを確保しなければいけません。
また、サービスの縮小に合わせてサーバーの規模を縮小したいケースでも、システムを組み替える必要が出てきます。
クラウドサービスのように、利用するサービスによって料金が変動するシステムを「従量課金制」といい、規模の変動に対応しやすい要因といえるでしょう。
(3)トラブルに自社で対応する必要がない
クラウドへ移行すると、クラウドサービスのベンダーがトラブルに対応してくれるため、自社で対応する必要がなくなります。
サービスを利用できる状態で提供することは、ベンダー側の責任だからです。一方オンプレミスでの管理では、システム障害に対応するための体制を整えておかなければなりません。
また、自社が地震や台風などの自然災害の被害にあった場合でも、クラウドで管理されたデータは無事ですむ場合が多いです。
BCP対策(事業継続計画)の観点から見ても、トラブル対応は専門業者に任せる環境を整えておくとよいでしょう。
(4)老朽化の心配がない
オンプレミスでサーバーやネットワークを運用している場合、機器の老朽化による不具合が懸念されます。
そのため、定期的なメンテナンスや設備の買い替えが必要になるでしょう。
一方で、クラウドの管理はすべて専門業者が行ってくれるため、老朽化を心配する必要がなくなります。また、自動でアップデートが行われるため、常に最新の作業環境を保つことが可能です。
クラウド移行における3つのデメリット
メリットの多いクラウド移行ですが、気をつけるべきデメリットもあります。
具体的には、次の3つです。
- 既存のシステムが使えなくなる可能性がある
- カスタマイズできる範囲が限られている
- サービスが終了すると使えなくなる
それぞれ詳細を解説します。
(1)既存のシステムが使えなくなる可能性がある
利用するクラウドサービスによっては、自社で使っている既存のシステムと連携できない場合があります。
理由は、移行先のクラウドサービスが自社システムと互換性のない可能性があるからです。
独自の受発注システムを使っている場合、外部の事業者が提供するシステムの仕様や企画と合致しなければ、運用できない事態が起こり得ます。
対策として、複数のクラウドサービスを併用する方法もありますが、データの管理場所がバラバラになってしまうのが懸念点です。対策を講じても業務が煩雑になり、作業効率が落ちてしまっては意味がありません。
そのため、クラウド移行する前に既存のシステムと連携が可能か入念に確認をしましょう。
(2)カスタマイズできる範囲が限られている
クラウド移行した場合、使用できる機能の種類はベンダーが提供するサービスの内容に限定されます。
使用できる機能が限定されてしまうため、細かいカスタマイズができない点がデメリットといえるでしょう。
そのような状況でせっかくクラウド移行をしても、効率化したかったことが実現しなければ意味がありません。
また、クラウドサービスが使いづらかったとして、元の環境に戻す作業には莫大なコストと時間がかかってしまいます。
そのため、カスタマイズできる範囲を入念に確認し、社内で抱える課題を解決できるものか検討して導入しましょう。
(3)サービスが終了すると使えなくなる
クラウドへ業務を移行できたとしても、利用中にサービスが終了してしまえば使用できなくなります。
実際に終了してしまったクラウドサービスもいくつか存在し、利用者の多くは別のサービスへの移行を推奨されることとなっています。
自社ではコントロールできない要因で使えなくなってしまうのは、大きなデメリットです。
クラウドサービスを利用する場合はサービス提供者の動向によってサービスが終了するリスクも念頭に置いておく必要があります。
クラウド移行を進める4つのステップ
クラウド移行を進める流れは企業によって異なりますが、以下の4ステップが代表的な流れです。
- 解決したい課題を明確にする
- 移行の計画を立てる
- 移行作業を行う
- 運用しながら最適化する
それぞれ解説していきます。
(1)解決したい課題を明確にする
まずは、業務の中で解決したい課題を明確にしましょう。
そもそもクラウド移行を計画している段階では、現状の体制に課題があることが理由としてあるはずです。
たとえば、以下のような理由が考えられます。
- 複数の拠点から同じシステムをリアルタイムで操作したい
- テレワークに対応するために社外からアクセスできるようにしたい
- ペーパーレス化を進めたい
抱えている課題は会社によって違いますから、クラウドサービスを選ぶために自社の課題は把握しておくべきです。
システムに関わる部署それぞれの課題を洗い出し、クラウドサービスに求める機能を明確にしましょう。
(2)移行の計画を立てる
続いて、移行の計画をより綿密に立てておくことが重要です。
- 移行にかかる期間はどの程度必要か
- 移行作業を進めることで通常業務に支障は出ないか
- 移行後の運用負荷はどの程度かかるのか
- 移行後にランニングコストはどの程度かかるのか
上記はあくまで一例ですが、事前にチェックしておくことでスムーズに移行作業を進められるでしょう。
さらに専門業者と連絡を密に取り合い、変更内容を随時社内へ共有することで、無用な混乱を未然に防げます。
(3)移行作業を行う
計画立案を終えたら、実際にクラウドへデータや業務を移行していきます。
移行当日にトラブルが発生することを想定して「連絡体制」と「判断基準」は明確にしておきましょう。作業に携わる担当者の連絡先と連絡手段、当日の予定などを把握しておくことで、即座に対応や連絡が可能です。
また、万が一トラブルが発生したとして、移行作業を中断・続行する判断基準を決めておけば、スムーズに対応できます。
判断の遅れや連絡ミスを未然に防ぐために、当日の動きをシミュレーションして移行作業を行いましょう。
(4)運用しながら最適化する
クラウド環境を運用していくうちに、新たな課題が見えてくるはずです。
- データを管理する場所が複数あって確認しづらい
- 複数のサービスを併用するため業務の効率が落ちる
- データの使用量に対する費用対効果が低い
これらはあくまで一例であり、それぞれの企業によって見えてくる課題は異なります。
そのため、課題をそのまま放置せずに、サービスを運用しながら検証・改善を繰り返していきましょう。
業務の最適化を図っていけば、クラウド移行の効果を最大限に引き出せるはずです。
まとめ
サーバーの運用をインターネット経由で利用できるサービスへ移し換える「クラウド移行」。
オンプレミスと比較して導入コストが安く、事業規模の変更に柔軟な対応ができる点がメリットでした。
一方で、デメリットや導入の流れを把握しないまま移行してしまうと、逆に混乱やトラブルを引き起こしかねません。
そのため、再度社内で解決したい課題を洗い出し、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
