「IT」と「ICT」の違いとは?用語の意味と活用例を詳しく解説

「ITとICT、どちらもよく目にするけれど、何が違うのかさっぱりわからない」
「ICTが一般的に使われているらしいが、ITのほうがなじみ深い」
上記のような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
たしかに、ネット上ではどちらも似たような所で使われていますよね。
そこで今回は、ITとICTの違いについて、言葉の意味を解説しつつ、違いについて詳しくご紹介します。
「IT」と「ICT」とは何なのか
本章では、「IT」と「ICT」のそれぞれの意味を解説します。
(1)ITとは「情報技術」のこと
ITは、「Information Technology(情報技術)」という言葉の略称です。
ITという言葉は、2000年にIT基本法が制定された頃から日本でも広まり、現在でもよく使われています。
情報技術には、アプリケーションやインターネットなどの通信技術、インフラなど、さまざまなものを含んでいます。
ひとまず、「ITは情報技術そのものを指している」と覚えると理解がしやすいでしょう。
(2)ICTは「情報伝達技術」
ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語で表すと「情報伝達技術」のことです。
「インターネットをはじめとした情報を伝える技術を活用した産業やサービスのこと」を指しています。
たとえば、スマホを使った連絡などは分かりやすい例です。
仕事でスマートフォンを使って同僚や取引先とコミュニケーションをとりますし、外出先で書類などの情報を取引先や会社に送付することもあるでしょう。
ネット通販での買い物や、SNSで誰かと連絡することもICTに該当します。
インターネットを通じて他人とつながっていること全てが、ICTと捉えられるのです。
ICTは、インターネットなどを通して人同士をつなぐ役割をはたしている、といって良いでしょう。
「IT」と「ICT」の違い
本章では、「IT」と「ICT」の具体的な違いについて解説します。
(1)視点が違う
実は、ITもICTも、元々はほとんど同じ意味の言葉で、明確に区別されているわけではありません。ただ、具体的に言えば少し意味が異なってきます。
以下の表は、ITとICTの簡単な違いを示したものです。
IT |
ICT |
|
意味 |
情報技術そのもの |
情報伝達技術を使って人々をつなげる技術のこと |
実用例 |
PC、ソフトウェア、OA機器、アプリケーションなど |
インターネット、メール、SNS、ECサイト、医療、教育など |
ITは「情報技術そのもの」、ICTは「情報技術を使った技術やサービスのこと」を指しています。
ITは「コンピュータ関連の技術」、ICTは「コンピュータ技術を使って行う応用」を指していると言い換えられます。
ITとICTは、元々同じ意味を表す言葉ですが、情報技術に対して「重視している部分が違う」のです。
従来ITと呼ばれていたものがICTへと移り変わったため、混同されやすい言葉となっています。
(2)IT→ICTへ変化
日本で「IT」という言葉が本格的に使われ始めたのは、2000年に政府が打ち出した「e-Japan」構想を基にIT基本法が成立してからです。
現在でも日常的に使われており、デジタル技術を使ったものを指して使われます。
しかし、2004年に「e-Japan」構想を「u-Japan」構想に改正しており、このころから国内ではICTという言葉が使われています。
この時、政府がITからICTへと呼び方を変えるようにする動きがありましたが、現在呼び方がICTに完全に変化した訳ではありません。
ITもICTも使われているという現状があるため、今の分かりづらい状態になってしまっているのです。
(3)世界ではICTの方が一般的
国際的には、ITとICTどちらの技術も「ICT」と認識されており、ICTを使うのが一般的です。
日本でも世界基準に合わせるために、行政機関や公共事業などで用いられるようになってきています。
政府でもICTが主になってきていますが、省庁によってはまだITを使っているところもあるようです。
たとえば、経済産業省と総務省では使う言葉が異なります。
- 経済産業省:通信技術そのものを扱うことが多いため「IT」を使う
- 総務省:情報通信産業を扱うことが多いため「ICT」を使う
世間一般でも、ITに代わってICTが使われる場面も多くなってきています。
数年後、ITという言葉以上にICTという言葉が一般的に使われている可能性もあるでしょう。
ICTの活用例
私たちは、検索サイトやSNSの情報発信、ネット通販など、さまざまな形でインターネットを使っています。これらのインターネットを通した技術は、全てICTの発展によって成されたものなのです。
近年では、ICTの技術をさまざまな場所で利用する動きがあります。
本章では、ICTの具体的な活用例について、詳しく見ていきましょう。
(1)機器の導入だけではICTではない
大前提として「機器を導入するだけではICTとは言えない」ということを覚えておいてください。
ただ単にPCがある、タブレットが置いてあるといった状況だけでは、ICTとは言えません。
情報や技術をどのように活用するかが、最も大切な部分です。
(2)教育
教育現場では、PCやタブレットを使った解説が授業に取り入れられています。
紙媒体での解説では、どうしても見づらかったり理解しづらい部分でも、資料をズームしたり、すぐにネットで調べたりできるのが利点です。
また、子どものICTに関する能力を高められるのもポイントです。
PDFやパワーポイントなどの資料を先生と生徒で共有しながら説明する授業では、将来ビジネスの場で使う技能を育てられます。
わからないことをインターネットで検索して答える授業では、子どものICTを使って調べる力を高めることが可能です。
いずれにせよ、社会で必要不可欠な技能を子どもに身に着けてもらうための教育、といえるでしょう。
(3)福祉
近年特に発達したのが、インターネットを通して高齢者の状況を遠距離で把握できるサービスです。
離れた場所にいても、高齢者と福祉関係者がつながることで、より密着したサービスが可能になっています。
また、これからはPCやスマートフォンに慣れ親しんだ世代が対象となってきます。
そのため、状況確認だけでなく、買い物や行政サービスの申し込みなど、利用方法が多種多様になっていくことでしょう。
これから、更なるサービスの向上が期待される分野です。
(4)医療
医療の分野でも、ICTの働きに対して期待が高まっています。
近年では、新型コロナの問題もあってか、ICTを活用する場が急激に増えており、どんどんICT化が進んでいる分野でもあるのです。
密を避ける手段としてもオンライン診療は効果的ですから、広がっていったのも必然といえるでしょう。オンライン診察であれば、離れた場所に住んでいてもかかりつけの医院に通い続けられます。
病院に通いにくい地域に住んでいる患者さんや、引っ越しなどでかかりつけの医師から離れてしまった患者さんも安心です。
さらに、カルテの電子化によって、別の場所にいる医師や薬剤師が情報を共有できる点も見逃せません。
診察内容のチェックや薬に関してのミスも防げる、という利点があります。
データが共有されるため、病気に関するデータが集まりやすく、新たな診断・治療法が開発される可能性もあります。
(5)テレワーク
昨今普及したテレワークは、ICT活用例の最たる例です。
データをオンプレミスサーバーやクラウド上にしまっておけば、従業員間の連絡からクライアントとのやりとりまで、ほぼすべての作業がオンライン上でできます。
会議もWEBで行うことで、わざわざ出社せずとも濃密なやり取りができるのです。
ソーシャルディスタンスが必要な労働環境の整備につながります。
テレワークについて、詳しくは関連記事「テレワークとは?9つのメリットと6つの課題に役立つ方法を紹介」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
ITの活用例
本章では、ITの具体的な活用例について、詳しく見ていきましょう。
(1)CRM(顧客管理システム)
CRMとは、カスタマーリレーションシップマネジメントの略称です。
顧客の動きや要望をデジタルな場で集め、顧客情報を管理し、良質なサービスを提供するためのシステムです。「顧客情報を管理するためのシステム・サービス」と覚えておけばOKです。
既存顧客との関係を密接にし、LTV(ライフタイムバリュー)の向上を図り、さらに既存顧客の情報をマーケティングにも活かすために使われます。
社員がわざわざ顧客情報をまとめる必要がなくなるため、人件費をはじめとしたコストの削減に加え、対応の高速化による業務の効率化を実現できます。
今ではクラウド経由で提供しているCRMシステムも多く、オンライン経由で導入が可能なサービスがほとんどです。
次々に新しいCRMサービスが生まれており、サービス間での競争が起きたことで、導入費用も下がってきたこともあり、急速に普及が進んでいます。
(2)クラウドサービス
クラウドサービスは、インターネット経由で離れた場所にあるコンピューターを使うサービスのことです。
ストレージやファイルをはじめ、さまざまなリソースをユーザーの好きなように利用できるサービスとして、現在広く普及しています。
企業がこのサービスを導入する利点として最も重要なのは、「従業員の負担が大きく削減されること」です。
ハードウェアを導入する初期費用やメンテナンスの手間、自社サーバーの増設など、デジタル技術を利用する際に生じるリスクやコストを企業で負担せずに済みます。
さまざまなクラウドのタイプが存在し、自社に合ったサービスが見つけやすいのもよいポイントです。
クラウドサービスの詳細は、関連記事「クラウドとSaaSの違いとは?クラウド・SaaSの活用事例3つも紹介!」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
(3)Eラーニング
Eラーニングは、インターネットを利用した学習形態のことです。CD-ROMを使った学習など、PCを使った研修、学習は行われてきましたが、インターネットの普及により、その学習形態が進化した形で生まれました。
メリットとして、以下のような点があげられます。
- 場所を選ばずに学習できる
- 音声や動画によって効率的に学習できる
- 進歩状況などを共有して適切なフィードバックができる
- 自分の習得率に合わせた最適な学習方法で学習できる
デジタル化が進み、研修や教育もインターネットを介してできるようになってきているのです。
もちろんデメリットもあります。身体を使った作業はEラーニングでは対応できませんし、教える側と教わる側の直接の接点がないため、完璧に聞きたいことが聞けるわけではないという点です。
ただ、現在進められている働き方改革によって変化している業務体系には、非常にマッチした学習形態といえます。
(4)交通機関
交通機関で用いられているICカードも、IT技術によって生まれました。
切符を買うという手間をなくし、スムーズに移動を可能にするICカードは画期的な発明といえます。
1992年にフィンランドが世界で初めて交通機関にICカードを導入し、それに世界中がついていく形で普及しました。日本は、2013年に全国相互利用サービスを開始し、今現在まで多くの人に使われ続けています。
はじめは交通機関だけでしたが、さまざまな場面で用いられるようになり、今ではクレジットカードと紐づいた物もあり、その使い方は多岐にわたります。
同じ機能がスマホにも搭載され、タッチ決済をはじめとしたさまざまな類似サービスが展開されるなど、日々サービスの向上が図られています。
まとめ
ITとICTはほとんど同じ意味の言葉です。
元々ITと呼ばれていましたが、時代を追ってICTに変化していきました。
具体的に分けるのであれば、思いのほかハッキリとした違いが出てきます。
- IT:情報技術そのもののことを指す
- ICT:情報伝達技術の活用のことを指す
ほとんど同じ意味ですが、技術そのものなのか、技術の活用を指すのかという点で異なっているのです。
現在使い分けが完全に成されているわけではないため、どちらも使われています。
ITとICTの違いはかなり細かい部分ですが、違いを把握してくことで、言葉に惑わされずに済むでしょう。
特にICTは、これからさらに使われていくであろう言葉です。
ICTの普及にも、目を光らせておきましょう。
