クラウド化とは?5つのメリットや4ステップの導入の流れを解説

「クラウド化とは何か?」
「なぜクラウド化する企業が増えているのか?」
「クラウド化する流れを知りたい」
インターネット上にデータ管理や業務の移行ができる「クラウド化」。
新型コロナウィルス流行を機にテレワークの普及が進み、導入する企業が増えています。
導入に成功すれば多くのメリットを得られる反面、クラウド化する目的を明確にしていないと、逆に混乱やトラブルを引き起こしかねません。
そこで本記事では、以下の情報をまとめました。
- クラウド化とは何か
- クラウド化が進む背景
- 3種類のクラウド化
- クラウド化するメリット・デメリット
- クラウド化の流れ
本記事を読めば多くの企業でクラウド化が進んでいる現状が理解でき、クラウド化する流れが明確になります。
会議などで「クラウド化すべき分野が明確になった」と言ってもらうためにも、ぜひ最後まで読んで、クラウド化の情報をアップデートしてください。
クラウド化とは?
クラウド化とは、業務フローやデータ管理をインターネット上で行えるようにすることを指します。
インターネットを通じてサービスを提供する「クラウドサービス」を使って実現するケースが多いため、「クラウド化する」などと表現します。
- これまで自社サーバーで保管していたデータをクラウドストレージに移行して、テレワークに対応できるようにする。
- 多拠点の社員教育をオンラインで行ない、講師の人数を減らしながらも共通の研修を進められるようにする。
- Webメーラーを導入して、出張先からもメールの連絡ができるようにする。
特に新型コロナウィルス流行以降、86%もの企業がクラウドサービス(SaaS)の運用管理にかける時間が増えたと回答しています。
上記の結果はテレワークが急速に普及した背景も反映しており、社内でテレワークを推進するために重要なサービスの一つといえるでしょう。
クラウド化が進む背景
企業の業種や規模の大小に関わらず、クラウド化を進める企業は年々増加しています。
令和3年に総務省が行った「企業におけるクラウドサービスの利用動向」の調査によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%でした。
前年が64.7%だったため、前年と比べて4.0%も上昇しています。
また、令和2年の調査ではクラウドサービスを利用している理由として、「資産、保守体制を社内に持つ必要がない」とする回答が最も多かったです。
今までは、IT技術を担う貴重な人材がインフラのトラブル対応やメンテナンスにかかわる業務に、多くのリソースを割かれていました。
クラウド化を進めることで、割かれていたリソースを新しい価値を創造する業務に投入でき、企業の更なる発展に繋がります。
(1)8割以上の企業がクラウド化に「効果があった」と回答
クラウドサービスの効果については、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答した企業は87.1%でした。
グラフから、多くの企業がクラウドサービスの効果を実感していることがわかります。
逆に、「あまり効果がなかった」は0.5%、「マイナスの効果があった」は0.4%で、ネガティブな意見は1%未満でした。
クラウド化は8割以上が成功する施策(失敗リスクは1%未満)であり、多くの企業が効果を実感しているため導入が進んでいることがわかります。
(2)クラウド化が最も進んでいるのは「ファイル保管・データ共有」
利用しているサービスの内容については、「ファイル保管・データ共有」の割合が59.4%と最も高かったです。
次いで「電子メール」(50.3%)、「社内情報共有・ポータル」(44.8%)となっており、主にソフトウェアでのクラウド化が進んでいます。
後述するSaaSが「ソフトウェアでのクラウド化」であり、生産性を向上させるサービスの代表例です。
クラウド化が進む背景には、リソースの投入を最適化し生産性を向上させたい企業の意図が関係しているといえるでしょう。
3種類のクラウド化
クラウドサービスには、役割に応じて3つの種類があります。
- SaaS(ソフトウェアのクラウド化)
- PaaS(プラットフォームのクラウド化)
- Iaas(インフラのクラウド化)
アルファベットが多く混乱しそうですが、最初の頭文字で「ソフトウェア・プラットフォーム・インフラ」と覚えておけば簡単です。
ここでは役割ごとに詳しく見ていきましょう。
(1)SaaS:ソフトウェアのクラウド化
1つめのサービスは「SaaS(Software as a Service)」であり、言い換えると「ソフトウェアのクラウド化」です。「サース」または「サーズ」と読みます。
従来は、ソフトウェアを購入してパソコンにインストールする方法が一般的でした。
SaaSの登場によって、購入はせずに使用料を支払ってインターネット経由でサービスを利用するのが一般的になっています。
下記は、代表的なSaaSの例です。
SaaSのクラウドサービス一例 |
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クラウド化できるソフトウェアの業務例 |
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SaaSを導入するとインターネット経由でデータの編集や保存が可能で、データ紛失のリスクを軽減できます。
また、自動でアップデートが行われるため、常に最新のセキュリティ環境を保つことが可能です。
一方で、インターネットに接続できない環境では利用できないデメリットがあります。
SaaSについては、関連記事「SaaSとは?特徴やメリット、主なサービスについて解説」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
(2)PaaS:プラットフォームのクラウド化
次は「PaaS(Platform as a Service)」であり、言い換えると「プラットフォームのクラウド化」となります。読み方は「パース」です。
PaaSはソフトウェアやシステム開発などに利用されるプラットフォームを提供するサービスです。
PaaSのクラウドサービス一例 |
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クラウド化できる業務例 |
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主にエンジニア向けのサービスで、開発環境のプラットフォームをインターネットを介して利用できます。
面倒な開発環境を整える手間を削減できる点がメリットです。
一方で、使用できるデータベースやプログラミング言語はPaaSが提供しているもののみに限られます。
そのため、細かいカスタマイズができない点がデメリットといえるでしょう。
PaaSについて詳しくは、関連記事「PaaSとは?意味・メリット・サービスを選ぶポイントを解説」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
(3)IaaS:インフラのクラウド化
最後は「IaaS(Infrastructure as a Service)」です。「イアース」もしくは「アイアース」と読みます。
かんたんに言えば「プラットフォームのクラウド化」です。。
IaaSのクラウドサービス一例 |
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状況に応じた運用が可能な点が大きなメリットです。
インフラの拡張や縮小、オプションの追加を短期間で行えるため、資金が少ないスタートアップ企業や中小企業向けのサービスといえます。
IaaSについて詳しくは、関連記事「laaSとは?特徴やメリット、主なサービスについて解説」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
クラウド化する5つのメリット
クラウド化を導入する、具体的なメリットをご紹介します。
代表的なものは、次の5つです。
- 自宅や出張先からアクセスできる
- 導入コストを抑えられる
- 導入してすぐに使い始められる
- 規模の拡張や縮小に対応しやすい
- BCP対策になる
それぞれの理由も解説します。
(1)自宅や出張先からアクセスできる
クラウド化した場合、インターネットがつながる環境であれば、自宅や出張先からでもアクセス可能です。
離れた場所にいるスタッフとも共同で作業が行えるため、事務所に出社せずともリアルタイムで業務を進められます。。
たとえば、会計管理など従来では自社のオフィスにいなければできなかった業務も、クラウド化して管理すれば自宅からでも行えるようになります。
テレワークや在宅勤務を推進するためにも、クラウド化は有効な手段といえるでしょう。
(2)導入コストを抑えられる
クラウドでの管理は自社サーバーでの管理コストと比べ、導入コストを抑えられる可能性があります。
自社サーバーで運用する場合、機材の購入費用やシステム構築・保守管理など、多くの初期費用が必要です。
一方で、クラウドサービスは使用料を支払えばすぐにサービスの利用を開始できます。
通常では莫大なコストがかかる分野であるため、導入コストを抑えられる点は大きなメリットでしょう。
(3)導入してすぐに使い始められる
クラウドサービスは契約後にすぐに使い始められます。
サーバーやシステム構築などは、クラウドサービスを提供するベンダーによって、すでに用意されているからです。
一方で自社でシステムを構築するには、多大な時間とコストがかかってしまうでしょう。
常に変化を求められるビジネスシーンにおいて、導入後すぐに使えるクラウドサービスは心強い味方となってくれるでしょう。
(4)規模の拡張や縮小に対応しやすい
ビジネスを拡大する際には多くの機材やシステムに投資する必要があります。
けれども規模の縮小を余儀なくされた場合は、投資したコストが無駄になってしまう場合もあるかもしれません。
その点、クラウドサービスは従量課金制のため、使用した分のコストを支払うシステムです。
ビジネスが拡大すればサービス利用を増やして多く支払い、規模が縮小すればサービス利用を減らせば良いので、対応しやすい特徴があります。
(5)BCP対策になる
BCPとは、Business Continuty Planの略で「事業継続計画」を意味します。
自然災害や大火災、テロ攻撃などの緊急事態の際に、事業継続にかかわるデータが消失してしまう可能性は非常に高いです。
その際に、社内サーバーで保管していたデータをクラウド上で管理していれば、会社自体が被害を受けてもデータを守ることができます。
そのため、自社サーバーのクラウド移行は、有事に備えたBCP対策として有効な手段といえるでしょう。
クラウド化における3つのデメリット
メリットの多いクラウド化ですが、気をつけるべきデメリットもあります。
具体的には、次の3つです。
- 既存のシステムと連携できない場合がある
- セキュリティがサービス提供者に依存する
- サービスが終了すると使えなくなる
それぞれ詳細を解説します。
(1)既存のシステムと連携できない場合がある
利用するクラウドサービスによっては、自社で使っている社内システムと連携できない場合があります。
なぜなら、移行先のクラウドサービスが自社システムと互換性のない可能性があるからです。
独自の受発注システムを使っている場合、外部の事業者が提供するシステムの仕様や企画と合致しなければ、運用できない事態が起こり得ます。
さらに、互換性を調査した結果、自社に最適なクラウドシステムが見つからない場合もあるでしょう。
そのため、自社システムをクラウド化する際は、クラウドシステムと互換性があるか確認しましょう。
(2)セキュリティがサービス提供者に依存する
クラウドサービスのセキュリティレベルは、サービス提供者の対策状況に依存します。
サービスの性質上、常にインターネットとつながっているため、外部からの攻撃を受けるリスクを考慮しなければなりません。
その際に、ぜい弱なセキュリティでは守りを突破されてしまい、多大な被害を受ける可能性があります。
クラウドへデータを移行する際には、セキュリティに関するデメリットも十分に理解したうえで判断するようにしましょう。
クラウドのセキュリティについて、詳しくは「クラウドサービスにおけるセキュリティリスクとは?オンプレミスとの違いや選び方をご紹介!」で解説しておりますので、是非あわせてご参考ください。
(3)サービスが終了すると使えなくなる
クラウドへ業務を移行できたとしても、利用中にサービスが終了してしまえば使用できなくなります。
ITreviewの調査によると、SaaS関連のサービスは約5,000以上も存在します。(2022年8月現在)
大成功を収めるサービスもあれば、事業の採算が合わなくなりサービス終了に追い込まれる事業も少なくありません。
そのため、クラウドサービスを利用する場合はサービス提供者の動向によってサービスが終了するリスクも念頭に置いておく必要があります。
クラウド化の流れ4ステップ
実際のクラウド化を進める流れは企業によって異なりますが、以下の4ステップが代表的な流れになります。
- 事前調査
- 計画
- クラウド化実施
- 事後検証
まずは事前調査を行い、クラウド化する業務と具体的な目標を決めましょう。
例えば「クラウドサービスを導入してサーバーの管理コストを10%削減する」などです。
クラウド化する目標や目的が明確になれば、クラウドへ移行する業務が決められます。
この段階で、セキュリティ面を考慮してクラウドへ移行するものとしないものを分けておけば、移行時に直面する問題にも即座に対応できるでしょう。
次に、クラウドへデータや業務を移行していきます。
その際に社員へクラウド移行時の変更点や利用方法を共有・指導しておくことで、混乱やトラブルを未然に防げるでしょう。
最後に、クラウド化による効果検証を行います。
クラウド化したことで逆に運用コストがかかってしまったり、業務効率が低下してしまったりと、具体的な課題を洗い出して解決していきましょう。
検証・改善を繰り返すことで、クラウド化の効果を最大限に引き出せるはずです。
まとめ
インターネット上にデータ管理や業務の移行ができる「クラウド化」。
8割以上の企業がクラウド化に確かな効果を実感しており、年々導入する企業は増えています。
利便性の高さやコスト削減といった実益だけでなく、自然災害などの不測の事態に対する備えとしても有効な手段です。
導入後の効果検証や問題点の改善を行うことで効果をより実感しやすくなるため、導入しやすい分野から検討してみてはいかがでしょうか。
