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働き方改革とは?関連する8つの法律や長時間労働・有給取得などのポイントを解説

「働き方改革って何だろう…」
「働き方改革で実際に何が変わっているのか知りたい。」

働き方改革は近年、政府が力を入れている取り組みとして注目を集めています。


しかし、働き方改革をいまいち理解していなかったり、働き方改革によって何が変わっているのかを知らない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、働き方改革の概要やポイント、現状を解説します。

働き方改革について理解することで社会の流れが分かり、自社の働き方について客観的な視点を持てます。

社会の流れに対応していくため、働き方改革についての理解を深めましょう。

 

働き方改革とは?

働き方改革とは?

働き方改革とは、「一億総活躍社会」の実現を目指して、政府主導で行われている改革です。

「一億総活躍社会」とは、「働く人々がそれぞれの事情に応じた働き方を自分で選択でき、50年後も人口1億人を維持して職場・家庭・地域で誰しもが活躍可能な社会」を指します。

働き方改革が行われる背景には、少子高齢化や労働力不足の減少があります。出生率の改善や働き手の増加を目的として、働き方改革が進められているのが現状です。

政府は2016年9月に「働き方改革実現会議」を設置し、総理自ら議長となり、労働界や産業界、有識者と働き方について議論する場を設けました。

2017年3月には長時間労働の是正など、9分野における具体的な方向性を示した「働き方改革実行計画」をまとめ、2018年6月には「働き方改革法案」が成立しました。

働き方改革は「一億総活躍社会」実現に向けた最大のチャレンジとされており、政府も力を入れている改革です。今や影響は大企業だけでなく中小企業にも及んでいるため、社会人としては知っておくべき内容と言えるでしょう。

厚生労働省が定める働き方改革のガイドライン

厚生労働省が定める働き方改革のガイドライン

働き方改革は政府が主導で進めている改革のため、厚生労働省が定めたガイドラインが存在します。

ガイドラインの冒頭には、下記のような言葉が記載されています。(引用元;厚生労働省「働き方改革」)

働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます。

ガイドラインでポイントとされているのは、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」です。簡単に言うと、長時間労働と正規雇用労働者・非正規雇用労働者間の差をなくすことで、「一億総活躍社会」の実現を目指しています。

働き方改革が目指すもの

働き方改革が目指すもの

本章では、働き方改革が目指すものについて解説します。働き方改革が目指すものは、大きく分けて、下記の2つです。

・少子高齢化への対応
・育児や介護と仕事の両立

働き方改革について理解を深めるためには、目的を知る必要があります。働き方改革の目的を把握しておきましょう。

(1)少子高齢化への対応

現在、日本では高齢者の割合が増加する「高齢化」と、出生数・若年者人口が減少する「少子化」が同時に進行する「少子高齢化社会」です。2060年ごろまでに、65歳以上の人口はほぼ変わらないものの、20~64歳までの人口が大きく減少し、高齢化率は約10%上昇するとされています。また、出生数は1970年代前半をピークに右肩下がりです。

少子高齢化が進むと働き手が減り、労働力不足になってしまいます。そのまま何も手を打たなければ働き手がいなくなり、国全体の生産力や国力の低下につながるでしょう。

そこで、働き方改革を実施し、より多くの国民が働けるように動いています。主婦の方や障がいを持つ方、お年寄りの方など、全員が働いて活躍できる社会が「一億総活躍社会」です。

参考:財務省「日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか
   厚生労働省「出生数、合計特殊出生率の推移

(2)育児や介護と仕事の両立

近年、日本では働き方のニーズが多様化しています。具体的には、育児をしながら働いたり、介護をしながら働いたりするなどです。

働き方のニーズの多様化は、高齢者の割合の増加や共働き世帯の増加が関係しています。高齢者の割合が増加する「高齢化率」は、40年後には約10%増加すると言われています。また、共働き世帯は1990年代後半から右肩上がりに増え続けているのが現状です。

従来のような出勤型のフルタイム労働では、育児や介護をしながら働くのは困難です。時間に融通の利くフレックスタイム制の導入や、パートタイム労働者でも働きやすい法整備を通して、多様な働き方ができる社会の実現を目指しています。

参考:財務省「日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか
   厚生労働省「共働き等世帯数の年次推移

労働関連の8つの法律「働き方改革関連法」

労働関連の8つの法律「働き方改革関連法」

働き方改革を進めるためには、既ににある労働関連の法律の改正が必要でした。

そこで、下記8つの労働関連の法律を改正しました。加えられた改正の総称を、「働き方改革関連法」と呼びます。

  1. 労働基準法
  2. 労働時間等設定改善法
  3. 労働安全衛生法
  4. じん肺法
  5. パートタイム・有期雇用労働法
  6. 労働者派遣法
  7. 労働契約法
  8. 雇用対策法

この改正により、まず時間外労働の上限が規制されました。これにより、長時間労働が規制されます。月60時間を超える残業に対しては、割増賃金が引き上げになります。

勤務時間インターバル制度の導入促進も行われ、事業主は前日の終業時間から翌日の始業時間までに一定の時間を設ける努力義務が明文化されました。

年次有給休暇の確実な取得も定められたため、企業側は10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、5日分は時季を指定して確実に取得させなければいけません。

また、フレックスタイム制の拡充、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保なども取り入れられました。

「働き方改革関連法」により労働環境を改善し、「一億総活躍社会」の実現を目指しているのが現状です。

働き方改革で注目される5つのポイント

働き方改革で注目される5つのポイント

働き方改革にはさまざまな試みがありますが、特に注目すべきポイントがあります。働き方改革を理解するうえでは特に重要なポイントのため、確実に把握しておきましょう。

働き方改革で注目されるポイントは、下記の5つです。

  1. 長時間労働の解消
  2. 年5日の有給取得
  3. フレックスタイム制の拡充
  4. 60時間以上の残業で割増賃金引き上げ
  5. 非正規社員と正規社員の格差を解消

働き方改革への理解を深めるため、知っておきましょう。

(1)長時間労働の解消

働き方改革では、長時間労働の解消が進められています。日本では長時間労働が問題となっており、特に欧州諸国と比較すると、年平均労働時間が長いです。過労死も問題になっていたため、長時間労働の解消は注目を集めています。

具体的には、「時間外労働の上限規制」と「勤務時間インターバル制度の導入促進」、「労働時間状況の客観的な把握」が長時間労働の解消に貢献するとされています。

「時間外労働の上限規制」は労働基準法の改正により、時間外労働の上限(原則月45時間、年360時間)が設定されました。

労働時間等設定改善法の改正では、事業主は前日の終業時間から翌日の始業時間までに一定の時間を確保する「勤務時間インターバル制度の導入促進」の努力義務が定められました。

労働安全衛生法の改正により、「労働時間状況の客観的な把握」としてタイムカードやPC機器などを使って、労働者の労働時間を把握しなければいけません。

参考:厚生労働省「我が国における時間外労働の現状

(2)年5日の有給取得

働き方改革で労働基準法が改正され、年5日の有給取得が義務となりました。

具体的には、0日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、企業は5日分の有給休暇を、時季を指定して確実に取得させる必要があります。

今までは、有給休暇を取ろうとすると上司に嫌な顔をされたり、周りが有給休暇を取っていないために取りづらい雰囲気があったりする状況がありました。

この改正により、「有給休暇を取得する権利」ができたため、これまでより有給休暇取得へのハードルが下がるでしょう。

有給休暇取得率の増加によって、子育てをしながらの就業など、多様な働き方の実現が期待されています。

(3)フレックスタイム制の拡充

働き方改革で労働基準法が改正され、フレックスタイム制の拡充が定められました。

フレックスタイム制とはあらかじめ定められた労働時間の範囲内で、労働者が始業・就業時間を自由に決めて働ける制度です。フレックスタイム制は、ワーク・ライフ・バランスを取りやすく、育児や介護などと両立しながら働けます。

また、資格取得などの勉強をしながら働いたり、急な怪我や病気でも病院に寄ってから出勤したりなどの柔軟な働き方もできるでしょう。改正では、フレックスタイム制を導入する企業側、利用する労働者側の両者にとって、フレックスタイム制が使いやすくなりました。

フレックスタイム制の拡充により、多様な働き方が広まることが期待されます。フレックスタイム制については公式の手引きがあるため、以下の資料を参考にしてみてください。

参考:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

(4)60時間以上の残業で割増賃金引き上げ

働き方改革で、割増賃金に関しての改正がありました。具体的には、月60時間を超える残業に対しての割増賃金が引き上げになります。これまでは、月60時間を超える残業については大企業が50%、中小企業は25%の割増賃金を支払うというルールでした。

しかし、2023年4月からは中小企業も大企業と同じく、割増賃金率が50%に引き上げられます。そのため、大企業も中小企業も残業60時間以下は25%、残業60時間以上は50%の割増賃金率に統一されました。

これにより、中小企業の残業時間減少が期待されています。

(5)非正規社員と正規社員の格差を解消

働き方改革で労働者派遣法やパートタイム・有期雇用労働法の改正により、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保が定められました。この改正は、非正規社員(アルバイト・パート)と正社員の格差を解消することが目的です。

非正規社員は正社員と比べ、賃金をはじめとする待遇に差があります。そのため、子育てや介護をしながら非正規社員として働く方は満足な働き方ができず、働く機会を失っていました。

今回の改正は「同一労働・同一賃金」とも呼ばれています。仕事内容が同じ場合は基本給やボーナスなどの賃金のほか、研修や福利厚生などの待遇など、雇用形態によって差をつけることはできません。

これにより非正規社員と正規社員の格差を解消し、より多様な働き方ができる社会の実現が期待されています。

働き方改革の現状

働き方改革の現状

働き方改革は、「一億総活躍社会」の実現を目指してさまざまな法改正などを行っていますが、現状はうまくいっていない部分も多いようです。まず、働き方改革の推進状況です。

株式会社NTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象にした「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」を公表しています。

この調査によると、働き方改革に取り組んでいる企業は56.0%で、前回の調査に比べて増えました。しかし、従業員規模別で見ると、下記のようになっています。

従業員規模 働き方改革に取り組む企業の割合
1,000人以上 77.1%
100人以上1,000人未満 55.9%
100人未満 34.0%

上記のデータを見ると、従業員規模が小さくなるほど働き方改革に取り組めていないのが現状です。

また、東京都産業労働局が実施した調査によると、「時間外労働の上限規制」が入って実際に労働時間に変化があったのは49.0%で、31.2%は変化が無かったと回答しています。

時間外労働がなくなっても、上司が定時退社や業務時間削減を強いてくるなど、新たな問題が出てきています。新たな問題に対処するには、再度会社内でのルール作りや、新たな法改正などの対策が必要です。

働き方改革は認知こそ広がってきていますが、うまくいっている例は多くなく、課題が残る状況になっています。

まとめ

働き方改革は、「一億総活躍社会」の実現を目指して、政府主導で行われている改革です。さまざまな法改正が行われ、多様な働き方ができる社会を目指しています。

しかし、従業員が少ない企業は働き方改革に取り組めていなかったり、新たな問題が出てきたりと、まだまだ課題も多いです。働き方改革について問題や不安を感じている場合は、厚生労働省が設けている相談窓口を利用するのも有効です。

働き方改革は今後も継続して取り組む必要があると予想されるため、本記事を参考に、働き方改革について理解を深めましょう。

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メタップスクラウド編集部

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